議事録
<1999.3月例会 講演要旨>
秋田県観光の現状と課題
  〜大交流時代における秋田県の観光の方向〜

秋田県商工労働部観光課長
永木 宏明 氏

平成11年3月10日(月) 於 みずほ苑

秋田県におけるボランティア・NPO活動の現状とNPO法との関わりについて講演していただき、その後、活発な討議が行われた。



はじめに

秋田の観光は、秋田新幹線「こまち」の開業、秋田自動車道と東北自動車道の連結を契機に、人や物の交流が活発化しているが、まだに受け入れ態勢、とくに交通アクセスの整備が整っていない状況にある。今回は日本の観光の現状と、秋田の観光の現状、そしてこれからの秋田の観光振興への取り組みについて述べたいと思う。

観光の定義
 観光とは、「自己の自由時間の中で、鑑賞、知識、体験、活動、休養、参加、精神の鼓舞等、生活の変化を求める人間の基本的欲求を充足するための行為のうち、日常生活圏を離れて異なった自然、文化等の環境のもとで行う一連の行動」であると定義されている。世論調査によれば、最も生活の重点を置く項目として「レジャー・余暇生活」があげられている。余暇活動としての観光への期待は大きく、旅行を通じて豊かさを実感できることが重要視されている。

 さらに観光は「観光は平和へのパスポート」といわれるように、外国人との交流を通じて文化や歴史、生活様式など相互理解を図るなど国際相互の理解という役割も担っている。

 現在の日本の観光を取り巻く状況として5つの項目があげられる。第一に労働時間の減少や休日増加による自由時間の増大により、レジャーや余暇活動に対する指向が一段と強まっていることである。とくに非日常的な体験による、驚きや安らぎを感じることができる観光への関心が高まっている。

 第二に価値観の多様化があげられる。観光における旅行形態やその内容も多岐にわたっている。近年では高齢者層の自動車による観光が増加するなど、旅行形態の変化がうかがえる。また「見る観光」からアウトドア等の「体験する観光」へと変化してきている。

 第三に少子高齢化の進展があげられる。平成20年頃には、国民の4人に1人が65歳以上の高齢者になると予想されるため、観光市場も高齢者に期待するところが大きく、バリアフリーなど高齢者に優しい観光地づくりが求められている。

 第四には高度情報化社会の到来に伴う情報ネットワークの形成により、観光情報提供システムの高度化・重層化が進展していること があげられる。

 第五に国際化の進展があげられる。最近の円安の影響によりやや頭打ち傾向にはあるものの、海外旅行者はここ10年間で約4倍近い伸びとなっている。このように、国内旅行と海外旅行が同じ土俵で比較・評価される状況になってきている。政策的にも平成9年に「外客来訪促進法」が制定され外国人観光客の誘致が進められており、秋田県でも青森、岩手両県と連携し「北東北3県外客来訪促進 計画」を策定し外国人観光客の誘致につとめている。



国内観光の状況
 次に現在の観光の状況をみると、国内旅行は長引く景気低迷などにより横這いもしくは若干の増加にとどまっている。増加している2割の地域は、新幹線や高速道路、長大トンネルや橋の開通など、交通インフラが大幅に改善された地域や、航空運賃の値下げや低価格ツアーが設定されている地域などである。
 また、旅行の形態はかつての金銭消費型は減少し、いわゆる「安・近・短」旅行が主流になっている。最近では低価格商品の出現により「安・遠・短」の旅行も増加している。こうした中で国内観光地間での観光客獲得競争が一段と激しくなっており、なかでもロットの大きい北海道や沖縄を中心に低価格ツアーが増加している。

 インバウンド(海外からの旅行者)の状況をみると、平成9年の外国人観光客は422万人と初めて400万人を超え、過去最高を記録した。地域別では、アジアからの訪日者が全体の65%を占めており、台湾、香港、シンガポールなどが増加している。訪問先としては、東京を中心とした首都圏、大阪、京都をはじめとする関西圏が中心であるが、近年、九州を中心とした西日本の伸びが大きくなっている。また、東京ディズニーランドや長崎ハウステンボスなどのテーマパークも安定した伸びを示している。日本の受け入れ態勢は「外客来訪促進計画」に基づき、国際観光振興会(JNTO)を通じた集中的なPRや「i」案内所等の受け入れ体制の整備が促進されている。

 秋田県をはじめとする北東北3県をみると、外国人観光客は極めて少ないのが現状である。秋田県への外国人観光客は2万人程度といわれている。この理由としては、プロモーション不足や受け入れ態勢の不備によるところが大きいと思われる。
 秋田県の平成9年の観光客数は41,604千人で、前年より1,057千人(2.6%)の増加となっている。これには、秋田新幹線「こまち」の開業や秋田自動車道の東北自動車道との連結ならびに全線開通など、交通体系の整備が進んだこと、さらに平成7年から官民一体で展開している「秋田花まるっ大型観光キャンペーン」のPR効果が大きいものと考えられる。
 県外からの観光客についてみると15,295千人と前年より約170万人増加し、観光客の構成比でも36.8%を占めている。平成10年の見通しとしては「こまち」効果は一段落したものの、大館能代空港の開港とそれに合わせた観光プロモーションなどにより、前年並の入込み数が見込まれるている。

 秋田県の観光ルートとして、流動が最も多いのは「角館〜田沢湖〜八幡平〜十和田湖」のルートであり、冬場に国道341号が通行止めになるにもかかわらず、ゴールデンルートとしての地位を不動のものとしている。次いで「角館〜秋田〜男鹿」の流動が多くなっており、アクセス道の整備などによりさらに観光客の伸びが期待できる。今後は、白神山地、栗駒、鳥海など他の県内主要観光地も考慮したPR活動などの対策を行っていく必要がある。

秋田県観光
 秋田県では、観光産業振興のための直接的な施策として、施設整備への支援や経営改善、人材育成などの支援を行っている。また間接的な環境整備としては、観光基盤の整備、誘客宣伝活動などを推進している。
 秋田県の平成9年の観光消費額は、2,318億円と推計され、観光客1人当たりの消費額は、県外からの宿泊客は57,649円、県内日帰り客は、5,500円となっている。観光消費額は、県民総生産額の6.2%に相当する額である。この観光消費額を基に県内経済への波及効果を算出すると、約3,900億円(観光消費額の約1.7倍)の生産額を県内各産業に誘発している。この額は平成7年の県内総生産額の約10%にも相当する額となっている。
 しかし、秋田県の観光に対する認知度については、国立公園十和田・八幡平や世界遺産に登録された白神山地、竿灯やかまくらなどの祭りなど、全国に誇りうる多く観光資源があるにも関わらず、全国的にみるとイメージが薄い状況にある。旅行エージェントが行っている調査によれば、これまで秋田県の宿泊サービスは東北6県中最下位であったが1997年の調査では5位となり多少、向上したものの十分とは言えない。また、県の施策についてもハード面の整備のほかに宣伝誘致活動などに取り組んでいるが、他県と比較した場合、観光振興に関する予算がかなり少ないのが現状である。農業をはじめとする他の産業振興予算と比較しても格段に少なく、そのような中で効果的な活用に知恵を絞り事業を実施している状況にある。
 これまでみてきたように、秋田県の観光は高速交通体系の整備という追い風に乗って、官民一体となって大型キャンペーンを展開したことにより、一応の誘客効果がみられているが、依然として厳しい状況にあることに変わりはない。とくに観光産業基盤の脆弱さ、ハード・ソフト両面での受け入れ態勢の未熟、旅行形態の変化への対応、十分な観光振興財源の確保など、解決すべき課題が山積みしており、こうした課題を中長期的視点で地道に取り組んでいく必要がある。
 全国の観光地との差別化を図るため、地域に根ざした、特色ある観光素材や、メリハリのある四季の変化など、秋田の個性を活かした観光地づくりを進めていく必要がある。また今後の高齢化社会に備え、高齢者や子供、障害者に配慮した「やさしい観光地」づくりをすすめていく必要がある。

 秋田県の場合、宿泊施設等の集積度が低く主要観光地間の移動距離が長いという問題がある。この弱点を解消するため先導的な役割を持った県営宿泊施設の整備や観光情報センター等の立ち寄り施設、オートキャンプ場等の整備を進め、観光地のネットワーク化による広域観光ルートの形成を促進してきた。オートキャンプ場については、モータリゼーションの発達やアウトドア志向の旅行ニーズをうけ県内を高原型、海岸型、湖畔型などバラエティーに富んだ施設整備を進めている。また、観光客が減少する冬期間の誘客を促進し通年型観光を確立するため、昨年度は秋田ふるさと村を会場に誘致イベントを開催してきたが、県外客の誘致に結びつけるには至らなかった。このため、平成10年度は首都圏をターゲットに冬のイメージと観光魅力を周知するためのPRに重点をおいた事業を行って きた。具体的には、秋田ならではの冬の魅力である小正月行事をイ メージの中心に据え、JR東日本やエージェント、さらにはテレビ放送などとタイアップしたPRを展開している。

 観光客を暖かく迎え入れるホスピタリティ意識を高め、観光産業をリードする民間の人材育成が必要である。また体験型観光の増加をふまえ、観光客の要請に応えられるようボランティアガイドの育成と組織化を図るなど受け入れ態勢を整備する必要がある。
 観光サービス態勢の整備・充実のための取り組みとして「観光ビジネススクール」を開催している。これは観光事業従事者のサービス向上を図るとともに、民間が主体的に観光振興を図り観光産業をリードする指導力を持った人材の育成を目的としたものである。また、観光客が快適に一人歩きできるよう県境や主要交通結節点などに県境案内板や大型観光案内板を計画的に整備するとともに、ドライブインやガソリンスタンドを通じて観光マップの配布を行っている。さらに、市町村等が広域的な視点で独自に観光圏域を設定し実施している観光客受入態勢整備事業について支援を行っている。しかし、これについては県の財政上予算がつかず、なかなか進まないのが現状である。

 これまでの印刷媒体やイベントに加え、情報ネットワークを活用した宣伝展開を行う必要がある。さらに、北東北3県等と「連携と競争」を意識しながら、県境を越えた誘客宣伝活動に力を入れていく必要がある。

 秋田新幹線の開通や秋田自動車道の全線開通を契機に、「近くなった秋田」と秋田の観光魅力を全国にPRするため官民一体となって、「秋田花まるっ」キャンペーンやPR活動を行ってきた。また大館能代空港開港に合わせ、関西圏でイベントを実施し誘客活動につとめてきた。平成11年度はキャンペーンの総仕上げとして県外キャンペーンを中心に事業を展開していく予定である。具体的には、県内の観光地等をビジュアル的に紹介したパンフレットの作成、配布を行っている。このほかに、市町村と連携し秋田県ならではの体験型ツアーのパンフレット「秋田花まるっ倶楽部」を企画し旅行エージェント等に配布、説明し、体験ツアーなどを行ってきた。さらに、平成10年度からはパイロット事業として個別の旅行エージェントとタイアップし、旅行商品づくりの指針となるアクションプランを取りまとめ、平成11年度以降の商品づくりに活かしある。
 また、広域観光への取り組みとして北東北3県を中心に構成した北東北3県観光立県推進協議会を主体として広域的な観光振興に取り組んでいる。とくに、広域観光の取り組みの指針である「北東北文化観光振興アクションプラン」の策定や3県回遊型旅行商品開発事業、北東北3県合同福岡事務所のオープンに合わせて実施した九州プロモーションなど積極的な事業展開を図っている。
 他県に比べ基盤の弱い観光産業の足腰を強化していく必要がある。また、現在の行政主導の観光振興から民間主体へ移行するために社団法人秋田観光連盟の体質・機能の強化を図っていく必要がある。

 高速交通体系整備による時間距離の短縮、自由時間の増大などにより人や物の動きが、広域化・活性化する「大交流時代」が到来する。直接的な交流だけではなく情報ネットワークなどを通じた交流、精神的な交流も含め、これらは社会経済の活性化をもたらす重要な要素になると思われる。このようなことから、人の移動を要素とする観光は21世紀の主要産業にとなる可能性は極めて高いといえる。秋田県においても中長期的な観光推進方針を示した観光振興ビジョンを策定し体系的、計画的な施策展開を図っていくことが大切である。

秋田県商工労働部 観光課ホームページアドレス
http://www.hanamaru.akita.akita.jp/



〈フリーディスカッション〉
 低価格の旅行商品がなぜ可能なのかという質問が出された。
これに対し、明確な理由は分からないが施設を空けているより値段を下げてでも観光客を誘致した方がいいという考えからではないかという回答であった。しかし、航空会社、宿泊地など赤字に近い価格設定になっているとのことであった。また秋田県でも名古屋出発の十和田湖へのツアーが39,800円で企画されているとのことであった。

 秋田県は宿泊施設の値段が高いと聞いているが、その理由は、冬期間の施設利用が低いために3シーズン(春、夏、秋)で1年分の売り上げを稼ぐ必要があるためではないかという意見が出された。
これについてはその通りであり、3シーズンしか期待できないためにグレードが低い宿泊施設でも高い価格設定になってしまっている。今後は価格を下げるためにも通年観光を実施できるよう改善していきたいとのことであった。

 北海道では外国人観光客が「雪がおもしろい」として冬季観光が成り立っているのになぜ秋田ではできないのかという意見も出された。
これについては、北海道は受け入れ態勢や低価格の航空運賃など条件が整っているのに対し、秋田ではまだそこまでに至っていないとのことであった。また現在は北東北3が連携したり、ときにはJTBやJRなども交えて具体的な施策の検討を行っているとのことであった。

これに関連して、十和田湖等で雪を活かした観光は実施できるのではないかという意見が出された。
これまでは、交通アクセスの関係で十和田ホテルが1月〜4月中旬頃まで閉鎖されていたが、通年で営業できるよう県、小坂町、ホテルで検討している状況であるとのことであった。

 リーダー的人材の育成が必要というが、具体的にどのようなことを行っているのかという質問がだされた。
事業としてはビジネススクールを開催しているが、なかなか人が集まらない状況にある。この事業のもう一つの目的は、経営者同士の横のつながり、業界の人同士の情報交換を図ることにあると考えているとのことであった。

 観光産業で青森に勝てないのかという質問がだされた。
これには、民間が観光振興のイニシアティブをとっているため、行政も後押ししなければならない状況のようである。山形においても同様に民間主導で行われている。民間がしっかり活動している地域は、良い結果を残しているようである。このようなことから、秋田も人材育成を行いながら行政主導から民間主導へ移行していきたいとのことであった。

 観光ニーズの捉え方として、都会と地方のニーズが合っていないのではないかという意見が出された。
例えば地元の人にとっては厄介者の雪についても、地吹雪や雪下ろしツアーが成功したり、テレビもなく不便な乳頭温泉の人気が高いなど、観光客のニーズの捉え方が重要ではないかという意見が出された。
これに関しては、確かにこのようなニーズの多様化に対応する必要はあるものの、観光産業としてみた場合には、このような観光ではあまりリピーターが期待できないと思われるので、この分野に突出するのではなく広範囲な取り組みを行う必要があるとの意見が出された。

 広域観光と地域密着型観光とは相反するものではないのかという意見が出されたが、これについては、東京以西からの観光客に対しては北東北3県を対象とした観光拠点を周遊する広域観光を考えており、近県の観光客に対しては地域密着型を考えているため住み分けは可能であるとのことであった。
現時点で広域観光を考えた場合拠点を結ぶと移動に時間がかかるという問題があると思うがこれについてはどのような対策を行っていくのかという質問がだされた。これについては、JTBとともに広域観光の基準をつくりを行い、また立ち寄り施設のの設置なども進めているとのことであった。

 観光客の誘致には、お祭りによる効果が大きいと思うが、これについてはどのように進めているのかという質問がだされた。
これについては、お祭りによる誘客効果は大きく冬季では「かまくら」や「犬ッこ祭り」の小正月の祭りも期待できる。しかし、小正月の祭りは夜間に行われるものも多く、二次アクセスや宿泊の問題など、今後改善していく必要があるとのことであった。また、お祭りが同時期にぶつかる場合、時期を調整した方が誘客が期待できるのではないかという意見が出されたが、これについては、過去に調整したことがあるが、お祭りというのは神様を奉った地域行事であるため調整は難しいとのことであった。


以上 (出席者20名)
     

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 「社会資本整備の課題とその視点」-清水 浩志郎-
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